ホーム > 食品で染色!?廃棄予定の原料から生まれるサステナブル生地のプロジェクト
2024.4.30
サステナビリティの意識が高まっている現代、廃棄される予定の食品を使って繊維や布を染色する「フードダイ」が注目されています。
製品の染色には化学的に合成された塗料を使用していましたが、大量の廃棄物が出ることや汚水などが問題となっています。そこで食品を使って染色することで、フードロスの問題や汚染などの問題を解決できることに着目されているのです。
本記事では、廃棄予定の原料からサステナブルな生地を作るプロジェクトをご紹介します!
生地問屋YAMATOMIにはフードテキスタイルもあるので、合わせてチェックしてみてくださいね。
目次
SDGsやサステナブル的な取り組みが増えてきた現代日本ですが、いまだにフードロスや衣料の大量生産などの課題が根強く残っています。
まずはどんな課題があるのかを見ていきましょう。
フードロス(食品ロス)とは、まだ食べられるのに廃棄される食品のことです。日本では消費量の3割、重さにして523万トンが廃棄されているという現状があります。
この中には、まだ腐っておらず食べられたものや、形が不揃いとう理由だけで廃棄されたものも。
フードロスが減らない理由として挙げられるのは、過剰生産や売れ残り、家庭での作り過ぎなどです。
とはいえ、どうしても食べ切れない、商品として売り場に出せないという事情があるのも事実。廃棄される予定の食品をどう活用するかが、この問題の解決の糸口になるでしょう。
トレンドの流れが早いファッション産業は、たくさん作っても大量の売れ残りを発生させ、消費者に届けることなく廃棄してしまう「大量生産・大量廃棄」の業界だと言われています。
廃棄される衣料品の多くが化学染料を使って染められているため、大量生産すればするほど環境汚染につながってしまいます。
また、せっかく作った製品でも使われることなく廃棄されればゴミの量が増えてしまい、サステナブルとは言えません。
適切な量を生産し、アップサイクルしていくことが本課題の解決につながるでしょう。
参考:大量消費・廃棄からの脱却を目指して、アパレルや繊維業界にできる事とは!?
食品と衣料品。一見すると何の関係もないこれらの産業ですが、うまく組み合わせることでそれぞれの課題の解決に繋がります。
その代表となるのが、廃棄予定の食品を使って染色する「フードダイ」や「フードテキスタイル」です。
ここでは、サステナブルな4つのプロジェクトをご紹介します。
豊島株式会社が手がける「FOOD TEXTILE」は、食品会社が廃棄する予定だった野菜や食材から抽出した染料を使って染められた素材や商品を提供するプロジェクトブランドです。
カット野菜の切れ端、コーヒーや紅茶の出し殻、規格外で売り場に出せない野菜や果物などを活用。植物や食品に含まれている色味成分を抽出し、布製品を染色します。
食品や植物から取った色なので、ほとんどが淡く優しい色に仕上がるのが特徴です。まだ染料によるアレルギーなども発症しにくいです。
このとき、使用する化学染料は10%未満。化学染料をほとんど使わないことで、作るとき・使うとき・捨てるとき、どのシーンでも環境や人に優しいプロジェクトだと言えますね。
代表的な製品には、ファッションブランド「beautiful people」の赤カブ染めネームタグトートバッグがあります。
アシックスやコンバースといった大手企業とのコラボレーションもあるので、ぜひチェックしてみてください!
参考:
捨てられるはずの食材で染めた「サステナブル」なオリジナルグッズ
小松マテーレ株式会社による「Onibegie®(オニベジ)」は、玉ねぎの外皮成分とオリーブの葉や絞り殻、ワイン、ぶどうの絞り殻、お米のもみ殻、竹炭などを使って染色するプロジェクト。2016年のグッドデザイン賞も受賞しています。
天然成分を使用した草木染めという技術はありましたが、合成繊維との相性が悪いと言う課題がありました。
そこで玉ねぎの皮に含まれる成分が染色に効果的であることに気付き、玉ねぎと他の食品を使って合成繊維を染色できるようになったのです。
天然素材の味わいや植物だからこそのニュアンスなどが魅力的。化学染料では出せないナチュラルな色合いに加え、経年変化にも着目してみてください。
さらに、紫外線の反射が少なく人の目にも優しいこともポイント。環境にも人にも優しさのあふれるプロジェクトです。
参考:
環境にも優しい天然色素で染めた生地・Onibegie®オニベジの魅力。環境にも人にも優しいその理由とは?
化学的なものを使わず栽培したオーガニックコットン。そして、廃棄予定の食材から抽出した染料で染め上げるフードダイ。これらを組み合わせたサステナブルなプロジェクトが「BF KITCHEN」。
兵庫にある縫製会社「ソーイング竹内」が展開するプロジェクトブランドです。
染色したあとに出る残さ(ろ過した後の残りかす)は、畑の肥料としてさらにアップサイクルしています。
フードダイのエプロンやコースター、ミトンなど、キッチン周りの製品を作っており、身につけたり使ったりするだけでサステナブルな活動につながりますよ。キッチンに立つ自分が、きっと好きになれるはず。
さらに、「BF KITCHEN」の製品には、こちらも廃棄予定のお米から作った下げ札を使用。
「まずは自分の身近から」を感じさせられるプロジェクトですね。
毎日飲んでいる人も多いであろうコーヒー。実は、コーヒーからも大量の廃棄物が出ます。そんなコーヒーのゴミを資源に転換するアップサイクルプロジェクトが「UP COFFEE CHALLENGE」です。
コーヒーの豆かすが出涸らしなど捨てられているものを集め、様々な製品へとアップサイクル。テキスタイルで言えば、コーヒー染めのポーチやバッグなどが展開されています。
他にもコーヒーを使ったボディスクラブやキャンドルホルダー、ブックカバーなど、日常生活に「あったら嬉しい」アイテムも。気になる人は、テキスタイル製品と合わせて「UP COFFEE CHALLENGE」の公式サイトでチェックしてみてくださいね。
環境汚染につながるゴミをなくし、コーヒー産業のゼロ・ウエイストを目指すとともに、コーヒー農家の収入向上にもつながるプロジェクトです。この先何十年もおいしいコーヒーを飲めるように活動しています。
参考:UP COFFEE CHALLENGE – UP FOOD PROJECT
生地問屋YAMATOMIでも、フードテキスタイルを取り扱っています!
今回紹介した「Onibegie®(オニベジ)」や「FOOD TEXTILE」のファブリックも。
実際の色合いを確認したい場合には、サンプル帳をお取り寄せいただくことも可能です。
サステナブルな製品作りにぜひご活用ください!
参考:フードテキスタイル特集☆
こうしたフードダイのプロジェクトを知って驚きなのは、1つの食品や野菜で何種類もの色を表現できること。
たとえば「FOOD TEXTILE」は1つの野菜で10種類、「オニベジ」では6種類の天然成分で25色のカラーバリエーションを表現できます。「UP COFFEE CHALLENGE」でも、同じコーヒーから誕生したとは思えないくらいバリエーション豊富なカラーが展開されていますよ。
食品といった自然の成分が、シンプルに見えて実は奥が深く、複雑に絡み合っているという神秘性を秘めていることが伝わってきますね。
食品業界も、ファッション業界も、適量の生産と適量の消費さえできれば、廃棄物のロスを限りなく少なくすることは可能です。
こうしたプロジェクトの製品を購入したり、使用したりすることが支援につながります。私たちにできるサステナブルなアクションをとっていきましょう!