ホーム > 2024年以降はリネン生地が高い!?価格高騰の理由と作り手にできる対策とは
2024.5.21
モノづくりをしている人は、近年リネンの価格が高くなっていることにお気づきでしょうか?そう、じわじわと値上がりしているのです。
2024年以降は、もしかしたらリネンが手に入りにくくなるかも!?
今回の記事ではリネン価格高騰の理由を解説し、作り手や売り手に今できる対策を考えてみましょう。
目次
ナチュラルな素材感があるとして、アパレルやインテリアで人気の「リネン」や「ヘンプ」といった麻素材。リネン生地には素敵な魅力がたくさんあります。
また本ブログ「山冨ラボ」でもリネン生地の魅力については何度か取り上げています。
【生地LABO】リネン生地の魅力を解説!生活に欠かせないリネン素材の魅力と取り入れ方
【繊維素材LABO】麻・リネン・ラミーの生地の特徴とメリット・デメリットについて解説
そんなリネン生地の素朴な風合いがブームにもなり、街中のお店でリネン100%の商品を見かけることも増えました。まさに“沼”のごとくハマった人も多いのではないでしょうか。
実は近年、リネン生地の価格が高騰しているのをご存知でしょうか?
具体的には、2019年と比べると2024年は2.5倍の値上がり。モノづくりをしている人の中には、リネン生地を購入しようとして価格が高くなっていることに頭を悩ませている人も多いでしょう。
「将来的にはリネン生地が買えなくなる……」
「リネンの希少性が高くなり超高級生地になる……」
とも言われています。
では、なぜリネンの価格高騰が続いているのでしょうか?
結論から言えば、リネンの生産地であるヨーロッパの気候変動がリネンの価格に影響しています。
リネンは天然繊維、つまり原料は栽培によって作られています。リネン生地の原料(フラックス=亜麻)が収穫量を増やしにくい性質ということもあり、農産物としての生産量にはもともと限界がありました。
そこへ地球温暖化による気候変動の影響で、2022年から2023年はリネンの大不作が起こりました。在庫として保管していたリネンも2023年には底をつき、2024年現在リネンが手に入りにくい状態に。
またリネンを栽培する農家も減っているため、世界的にリネンの生産量が約半数まで落ち込んでいます。
リネンの価格高騰のもう1つの理由が、需要と供給のバランスです。
生産量が少なくても需要がそれほど大きくなければ、価格が高くなることはありません。リネンの場合ナチュラル素材ブームを巻き起こしたこともあり、生産量が減っても「欲しい」と思う人が多く、需要と供給のバランスが崩れています。
日本の視点で見ると、近年の円安も相まって、日本はもっとリネンを輸入しづらい状況だとも言えます。
リネンの価格高騰に頭を悩ませているのは作り手だけではありません。その商品を手にする消費者も頭を悩ませることに。
昔と比べて2.5倍も原料が高くなっているので、消費者が手にする商品の価格も高くなります。たとえば10,000円のリネンブラウスが2.5倍の25,000円で店頭に出されることになるのです。
驚くほどの値上がりで、どんなに素敵な商品でもなかなかお客様の手に届かない、手を出せない超高級品になるかもしれません。
高すぎる商品は売れ残りやすくもあり、売り手側としても課題となってきます。
リネンを使いたいけれど、なるべく安くで販売したい。そんなときに起こりやすいのが品質低下です。
リネンは1/40や1/60などが定番糸ですが、現在はこの定番手もなかなか手に入りにくい状況です。
1/80の細番手になるとより質が良く肌触りもなめらかになりますが、細い糸を紡ぐには質の高い原料が必要。無理やり細番手を作ろうとすると、その分質が落ちてしまいます。
なめらかさや機能性の高さが魅力のリネン生地が、品質低下により、本来の魅力を失ってしまう……。そんな悲しいことが2024年以降は起こり得るのです。
2024年以降の課題が大きいリネン生地。地球規模の気候変動なので、今後元の価格に戻ることは考えにくいですよね。
では、作り手や販売元ができることは何でしょうか?
それはずばり、「リネンの希少性を理解する」ということです。
今後作り手は、リネン素材が底を尽きたら「価格高騰した原料を仕入れる」か「リネン生地の生産を当面ストップするか」の2択を迫られます。
現在リネンの原料価格はピークではあるものの、今後も高騰が続くと見込まれるため、素材は今のうちにストックしておいた方が安心かもしれません。
生地問屋YAMATOMIでは100%のリネン・麻素材をたくさん揃えています。
「とにかく100%がイイ!」とこだわりたい作り手に、今後も寄り添っていきます。
リネン生地をストックしたら、トレンドに左右されるのではなく、消費者が長く愛用できる商品を作りたいですね。
同じ型を大量生産するのではなく、少量だけ作ったり、受注生産にしたり、リネン生地の希少性を守るモノづくりをしていきましょう。
リネン生地自体は耐摩耗性や抗菌性があり、丈夫で長持ちする素材です。その素材としての魅力を活かしてみましょう。
価格がどうしても高くなってしまうときは、綿麻混紡でも良いかもしれません。
お客様に「お気に入りの1着」と思ってもらえるような商品をぜひ作ってみてください!
リネンの価格高騰の原因となる気候変動は、元に戻すことはできないけれど、今からでも食い止めることは可能です。日頃の小さなアクションが環境を守ることにつながります。
世の中が便利になった一方で、ダメージを受けているのが地球環境。SDGsを意識して、環境にも人にもやさしい行動を心がけましょう!
リネン価格が高騰してデメリットが目立つと悲観的になってしまいがち。
しかし、原料や素材そのものの魅力や価値がなくなったわけではありません。今こそリネン素材、麻素材の希少性を見直し、大切にするときだと捉えましょう。
今後も素敵なリネン素材のアイテムをお店で見かけるようにしたい。リネン素材の並ぶお店をつくりたい。そんな想いを胸に、上手に現在のリネン素材と付き合っていきたいですね。