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【FABRIC∞LIFE】日ノ目スタヂオ様〜福岡県朝倉市の伝統工芸「甘木絞り」という絞り染めの制作をされている日ノ目スタヂオ・西村様〜

2023.9.15

YAMATOMIをいつもご利用いただいているお客さまへの取材企画【FABLIC∞LIFE】

今回のゲストは福岡県朝倉市(旧:甘木市)の伝統工芸「甘木絞り」という絞り染めの制作をされている「日ノ目スタヂオ」様にお話を伺いました。

地元の人も知らない消えた伝統工芸「甘木絞り」に出会うまで。

ーー本日はよろしくお願いします。まずはご自身の事業についてご紹介いただいてよろしいでしょうか。

日ノ目スタヂオと申します。僕は福岡県朝倉市出身で、朝倉市の伝統工芸である「甘木絞り」という絞り染めを作っています。

 

ーー以前から伝統工芸との繋がりがあったんでしょうか。

いえ、特に繋がりがあった訳ではないです。元々ファッションの専門学校に通っていて卒業後は県外でアパレルの仕事をしていました。とあるタイミングで地元に帰ることになり、せっかくなら地元に携わる仕事がしたいと思ったんです。

始めは福岡の有名な伝統工芸である「久留米絣」の織物を使った生地を扱うアパレル会社で働いてました。そのことがきっかけで伝統工芸に興味を持つようになったんです。

自分の地元にも伝統工芸ってあるのか気になって調べてみると「甘木絞り」というものがあることをそこで初めて知りました。更に調べると、既に消滅したものだったので伝統工芸の保存活動をされている方に会いに行き、そこで1年ほど技術を習った後に現在のブランドを立ち上げました。

 

ーー甘木絞りというものは今は残っていないんでしょうか?

産業としては昭和の始めに衰退して無くなってしまったと聞きました。現在は伝統工芸の保存活動をされている方が残していくために活動されていたそうです。

 

ーーなるほど。なぜ「久留米絣」ではなくあえて「甘木絞り」に携わろうと思われたんでしょうか。

久留米絣は工芸界隈では全国的にも有名ですが、甘木絞りは地元の人ですら知らないほどの知名度しかなかったんです。僕の中では甘木絞りを復活させて盛り上げていく方が楽しそうだと思ったのでそっちをやることにしたんです。

 

地元のマルシェで商品が売れず苦悩が続く中、ある出来事がきっかけで全国へ。

ーー勉強をされた後、どのように歩み出されたのでしょうか。

絞り染めの生地を使って洋服・小物類の製品を販売したいと考えていたので、まずは小物類を地域のマルシェに参加して販売をしたところから始まりました。

 

ーーお一人で始められたんでしょうか。

そうです。

 

ーー反応はどうでしたか?

そうですね…大変だった記憶しかありません。(笑)。うちのバッグで10,000円ちょっとするんですけど、すぐ近くのお店で2,000〜3,000円のバッグが売ってるんです。田舎のマルシェなのでお値打ちな商品を求めているお客さんが多く、なかなか売れませんでした。

 

ーー苦しい日々が続いたんですね。そこから事業の転換期となったタイミングはいつでしょうか。

良いのか悪いのかわからないんですが、事業を始めた同じ年に九州北部豪雨という災害が起きて朝倉市が注目されたんです。僕は地元で何かできることがないかと思い、甘木絞りを使ったチャリティTシャツを作りました。

その活動をメディアが取り上げてくれて、全国に「甘木絞り」の名前を知っていただくことができたんです。そこから百貨店から声を掛けてもらって、今は全国の百貨店の伝統工芸店や物産展の催事に参加させてもらえるようになりました。

 

ーー導かれるようなタイミングですね。現在は百貨店の出店がメインでしょうか?

そうです。始めは僕が現地に行ってたんですが、その間は制作活動が止まってしまうんですよ。なので今は母親に手伝ってもらっています。実は母も久留米絣のお店で長く販売をやっていて催事場にも出店した経験があるので頼もしいです。(笑)

 

幅広い世代へ伝統工芸の良さを伝えていきたい。

ーーきっかけは「楽しそう」という気持ちから始まったと伺いましたが、現在の商品作りについての思いや大事にされているところはありますか。

やっぱり伝統工芸なのでずっと未来へ続いていくものにしたいという気持ちがあります。伝統工芸に興味があるのは高齢な方が多いですが、できれば僕たちのような若い世代の方にも興味を持ってもらえるものにしていきたいですね。

その為に商品のデザインは若い人にも受け入れられるような物にするよう常に意識しています。絞りのデザインってぱっと見だと古い印象を受ける人が多いと思っていて、絞りのデザインを変えたり、洋服のシルエットもトレンドに合わせたものを取り入れながら作るようにしています。

 

ーーいつもトレンドはどこでキャッチされているんでしょうか

元々アパレルをやっていて服自体が好きなので、ファッション雑誌をよく見ます。あとは福岡市内に行き、歩いている人たちのファッションを見るのが習慣づいているのでそこからトレンドを勉強しています。

 

ーーなるほど。商品の制作や開発はどのようなペースでされているのでしょうか

洋服の縫製は内職さんにお願いしているんですが、制作に関しては1人でやっているので基本的にいつも作業に追われています(笑)一部の作業はお手伝いしてもらうこともできるんですが、絞りの出し方などの細かい技術はきちんと勉強しないと難しいんです。

 

ーー若い世代の方にも届けたいと伺いましたが、どのようなお客様へ届けたいと思われていますか

ゆくゆくはたくさんの人が甘木絞りのことを知っている状態にできたらいいなと思っています。まず始めは服が好きな人であったり、工芸が好きな人たちに興味を持ってもらえると嬉しいですね。

 

一つの産業、伝統工芸として「甘木絞り」をもっと広げていきたい。

ーー5年後、10年後のビジョンはありますか。

今はほとんど1人で制作をしているので、もっと規模を大きくして人を雇ったり、甘木絞りに関わる人をもっと増やして、広げていきたいなと思っています。

 

ーー地元の方で甘木絞りを私もやりたい!という人が来ることは嬉しいことでしょうか。

今仕事としてやっているのは僕1人だけなんですよ。このままだと地域の産業ではなくて、ただの個人作家みたいになっちゃうんです。なので僕以外にも工房をやっている人が増えていった方が伝統工芸として成り立つんです。もし甘木絞りに興味がある人がいればその技術を教えることもやっていけたらいいですね。

 

ーー一度無くなってしまった伝統産業が復活して、工房が増えていくということはあまり聞かないですよね。

そうですね。なかなか無いかなと思います。

 

ーー今、参考にされている地域の伝統工芸はありますか。

先ほどお話した久留米絣のような規模感で残していくことが目標です。距離的にも近いですし、あそこはしっかり産業として残っているんです。大学と共同してものづくりをしたり、ファッションの専門学校と一緒にファッションショーをしている取り組みはうちもやっていきたいですね。

 

ーーありがとうございます。最後になりますが、生地問屋YAMATOMIを利用していただいてご意見・ご感想があれば教えていただけますか。

初めて独立してまずどこから仕入れをしたらいいのかわからなくて不安だったんですが、YAMATOMIさんはネットから簡単に仕入れができるのでとても助かりました。これからもお世話になりたいと思っています。

 

専門学校を卒業後、アパレル会社に勤務しキャリアを積んだ西村さん。「地元に携わる仕事がしたい」という気持ちが芽生え、そこで出会った地元の消えた伝統工芸「甘木絞り」の世界へ飛び込み、自身のブランドを立ち上げました。幅広い世代へ伝わるように日々制作に励んでいる西村さん。「甘木絞り」の再興に向け邁進されている「日ノ目スタヂオ」さんから今後も目が離せません。

 

取材のご協力ありがとうございました!

協力:日ノ目スタヂオ様(https://www.hinome-studio.com/)
取材:濱本隼瀬
文:はまもとゆま


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