ホーム > 生地の地直し・湯通し・水通しの違いとは?それぞれのやり方を解説
2021.3.9
あなたが生地から洋服や小物を作るとき、地直しや湯通し・水通しをしているでしょうか?
モノ作りを始めたばかりの人は、それぞれ何のことかわからない、あるいは「そもそも必要なの?」と感じている人も多いかもしれません。
確かに、地直しも湯通し・水通しも時間がかかり、面倒なもの。しかし、するのとしないのとでは、出来上がるアイテムやその使い心地に大きな違いが生まれます。
今回は地直し・湯通し・水通し、それぞれの違いとやり方をご紹介しましょう!
目次
生地の地直しとは、簡単に言えば生地の“目”を整える作業のことです。
“目”とは、生地をズームアップしたときに見える編み目・織り目のこと。糸から生地を作り上げていきますが、完成したばかりの生地はこの“目”が粗くなっていることが多いです。
その粗い“目”をしっかりまっすぐに整えて、あらかじめ下処理をしてあげることを「地直し」と言います。
もし地直しをせずにそのまま洋服や小物を作ってしまうと、なんだか不格好なアイテムになります。どんなに縫製のテクニックがあっても、素材(=生地)に歪みがあると、仕上がるアイテムも綺麗なものにはなりませんよね。
生地の“目”の綺麗さ、言い換えると均一に並んだ正確さは、洋服や小物の仕上がりにも影響を及ぼします。
そこで地直しをして生地の“目”を整えることで、生地全体を見たときにも綺麗な仕上がりになるのです。さらに地直しには、“目”を整えることでゴワゴワな風合いをソフトにする役割もありますよ。
一見綺麗な生地に見えても、手元に来るまでにたたんだり、巻いたりすることで、“目”がズレてしまうことも。特に柄物をまっすぐ置いてみて、柄がズレていると感じたら、地直しを検討しましょう。
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▲生地の地直しの様子
生地の地直しをする前に、まずはその生地がどれくらい歪んでいるのかを確認しましょう。
①生地の端から横糸を1本つまみ、端から端までゆっくり糸を抜く。どれくらい生地が歪んでいるかをチェック
※ツイル生地など横糸が抜けない生地もあります。その場合は生地の歪みを目視で確認しましょう。
②生地の歪みがわかったら、手で直接歪みを直すか、アイロンで直すか、どちらかの方法で地直しをします。
【手で歪みを直す場合】
生地に霧吹きで水を吹きかけ、両端の耳(縦方向のライン)を持ち、“目”を見ながら動かして整える。
【アイロンで歪みを直す場合】
生地にスチームを吹きかけて、アイロンを当てて縦と横方向に動かす。斜めには動かさないように注意。
ウールやカシミアなどの獣毛素材の場合は、スチーム・当て布をしたうえでアイロンをかけるようにしましょう。
また、綿など水に浸しても風合いが変わりにくい素材の生地の場合、地直しのときにそのまま湯通し・水通しをすることがあります。湯通し・水通しについては、次の項目で詳しく解説しています。
すでに“目”が綺麗に整っている生地や、あるいは“目”が粗いまま使いたい生地などの場合には、地直しをする必要はありません。手芸品店などで市販されている生地は綺麗なものが多いので、そのまま使えるでしょう。
またポリエステル、ナイロンなどの生地は化学繊維なので、アイロンでシワを伸ばす程度で、地直しをしなくてもOK。アクリルも化学繊維ですがウールと同じ性質のため、スチームアイロンをかけるといいでしょう。
生地の湯通し・水通しとは、生地を縫製する前に一度お湯や水に浸けておくことです。
洗濯機や洗剤は使わず、手作業で行うことがほとんど。
生地の湯通し・水通しについて、詳しくは以下の記事でも解説しているので、合わせてチェックしてみてくださいね。
参考:生地の水通しや湯通しって必要?しておくべき理由と正しいやり方
生地の湯通しや水通しをせずに縫製してアイテムにしてしまった場合、後から思わぬトラブルが起きることがあります。
たとえば、シャツを洗濯したら縮んでしまった、色移りが激しく使い物にならなかったなど……。
湯通し・水通しをしなかった生地は、これまで一度も水を吸ったことがない状態です。そこから綺麗な洋服や小物を作っても、洗濯したり、または部屋の湿気を吸ったりすることで縮み・色落ち・色移りなどの不具合が出てきてしまいます。
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▲同じサイズで作った服でも、水通しをしないとこれだけの差ができてしまうんですね。
湯通し・水通しの目的は、生地を綺麗に洗うことではありません。生地を一度お湯や水に浸けておくことで、布目を整えて家庭いつでも洗濯できる状態、洗濯しても変形しないにしておくことが目的です。
あらかじめ生地に一度水を吸わせておくことで、あえて縮みや色落ちをさせておきます。すると、アイテムに仕上げたときの縮みや色落ちなどを予防できるので、必要な場合は湯通し・水通しをしておきましょう。
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▲水通しの様子
アイテムにしたときに綺麗な仕上がりになるように、次のやり方で水通しを行いましょう!
【水通しの準備】
①水通ししやすい大きさに生地を裁断する ②ほつれないように布端処理をしておく
【水通しの手順】
①広い洗面器・たらい・バケツ・バスタブなどに、布が十分浸るくらいの水を入れる。 ②生地を蛇腹に折りたたみ、水に一定時間つける。綿は1時間、麻は4時間。 ③力を入れすぎずに軽く脱水し、陰干しする。
水通しと地直しを同時にする場合は、先に水通しを済ませます。陰干しをして生地が生乾きのときに取り込み、そのままアイロンを当てて地直しを行いましょう。
常温の水ではなくお湯を使うことで、仕上がりはふんわりと柔らかくなります。風合いを柔らかくしたいときには、次の手順で湯通しを行いましょう。
【湯通しの準備】
①湯通ししやすい大きさに生地を裁断する ②ほつれないように布端処理をしておく
【湯通しの手順】
①広い洗面器・たらい・バケツ・バスタブなどに37度〜45度くらいのお湯を入れる。 ②生地を蛇腹に折りたたみ、水に一定時間つける。綿は1時間、麻は4時間。 ③力を入れすぎずに軽く脱水し、陰干しする。
すべての生地を湯通し・水通しする必要はありません。むしろ、水に浸けてしまうことで傷んでしまう生地もあるため、湯通し・水通しをする前に生地の性質を確認しておく必要があります。
湯通し・水通しが必要な生地はこちら。
逆に、湯通し・水通しが不要な生地はこちらです。
また、手芸品店などで市販されている綿・麻の生地は湯通し・水通しをしなくても、そこまで大きく縮んだり色落ちしたりすることはありません。市販の生地を利用し、湯通し・水通しが手間に感じるときは省略することもあります。
ただ生地問屋から卸してもらう場合には湯通し・水通しはされていない生地が多いので注意しましょう。
どんなに縫製のテクニックがあっても、地直し・湯通し・水通しがされていない生地を使うときは要注意!
後から縮んだり、色落ちしたり、思った通りのシルエットにならなかったり、不格好になったりと、さまざまなトラブルが起きてしまいます。特に商品として販売するときには、クレームにつながるかもしれません。
せっかく作るなら、仕上がりが綺麗なアイテムにしたいですし、長く使い続けたいもの。
少し手間はかかりますが、仕上がりに大きな違いが出てくるので、しっかりと生地の地直し・湯通し・水通しをしておきましょう!