ホーム > マズローの「欲求の断層理論」と衣服・ファブリックの関係性
2019.9.26
衣服やファブリック製品が今求められているものは何でしょうか?
普段あまり意識することはありませんが、少し視点を変えて、「マズローの欲求断層理論」でファブリックについて考えてみませんか?
「マズローの欲求断層理論」というと、難しそうですが、実はマーケティング目線から見てみるとまた違った発想が生まれるかもしれません。
目次
「マズローの欲求断層理論」と言うと、学生時代に習ったような……というレベルですよね。
改めておさらいしてみると、人には段階を踏んだ欲求があり、
と、徐々に高度な欲求が生まれるというものです。
とはいえ、現在私達が生きている世の中では、生理的欲求→安全欲求→帰属欲求→差別化欲求まではほぼ満たされていますよね。
そのため、「自己実現欲求」を求めた人の感情が消費行動につながっています。
しかし、すべての欲求が満たされていなかった時代にはファブリック・衣類に関する概念は異なっていたのでしょうか?
歴史の教科書なんかで見たことがあるのは、たとえば縄文時代の人が葉っぱや毛皮で身体を隠している様子。これもある意味では「洋服」と捉えることができるかもしれません。しかし、この頃の縄文人たちにとっての洋服は、あくまで「身の安全を守る」ためのものでした。狩りや植物の採取に出掛ける際に裸では皮膚を傷つけてしまう恐れがあったからです。
その後、弥生時代になると、縄文時代と比べ、人はファッションに目覚めたと言われています。人を模した「土偶」により分かっていることですが、貝殻や石などで装飾している様子がわかっています。また、植物の繊維や動物の毛皮などを編んでオシャレに見えるようにほどこした衣類を身に着けていました。
ただし、これらは「オシャレがしたい」というよりは、威厳を表す意味合いが強かったと言われています。
狩りをする動物に対してであったり、他の集落の相手に対してであったりと様々ですが、威厳を示すことで攻撃をされない、優位に立つことができるといった意味ではこの頃の衣服は「生理的欲求」「安全欲求」を目的としていたことになります。
その後、ファッションは人々の行動にも影響を与えるようになります。着ているものによって自分の行動が変わってきたという経験がある方は多いのではないでしょうか?
たとえば、学校の制服は「この学校の生徒である」ことを示すと同時に、あまりにも集団行動から逸脱した行動を抑制する効果があります。そして、同じ制服を着ていることで「この学校の仲間だ」という意識が生まれやすい心理がありますよね。
また、仕事の制服は「ナース服を着ているから看護師さんなんだろう」と判断できますし、駅でなにか困ったことがあれば駅員の格好をしている人に相談しますよね。
このような衣類の効果は「帰属欲求」「差別化欲求」に即しているのではないでしょうか。
現代に近づくにつれ、衣類の働きもどんどん「マズローの欲求断層理論」の高度な欲求に近づいて行っていることがわかります。
そして、近年に近づくと、ファッションは「差別化をはかる」ものへとさらなる進化を遂げます。
1967 年に来日してミニスカートブームを巻き起こした、モデルのツイッ ギーさんを真似して、多くの女性がミニスカートをはきました。これは、女性の社会進出や自己主張が欧米化していた流れとマッチし、「女性だって自己主張したい!」という流れをファッションという形で表現したものでした。
当時、日本は学生運動のような主張はもちろん、流行に敏感な若者が「みゆき族」と呼ばれるファッションに身を包むなど、日本人の価値観が欧米化しつつあった時代でもありました。
この頃からファッションは自分の考えや主張、立ち位置を示す「差別化欲求」を表現するアイテムになりつつあったのではないでしょうか。
そして現代では、「差別化欲求」の表現ほどではないにせよ、ノンバーバルなコミュニケーションとして自分のイメージを相手に伝える表現手法としてファッションは楽しまれています。
「モテ」をイメージしているのか、あるいは「強い女性」になりたいのかなど、自分のあるべき理想像を表現する手段としてファッションは有効なのですね。
このように時代に合わせて衣服、ファブリックの必要性が、マズローの欲求の断層理論によって変わっていっているのですね。こうしたことを意識してみると、消費者の方に対してどのような提案をすると刺さるのか、イメージしやすいのではないでしょうか。