ホーム > 尾州ウールの発祥!全国ナンバーワンの毛織物産地・尾州の魅力に迫る
2019.1.24
皆さまは日本位置の毛織物の産地、「尾州産地」をご存じですか?
愛知県の西部〜岐阜県の一部と、県をまたぐ位置にあり、絹の生産に必要な桑畑や、綿花畑に良い土壌が豊富な土地であり、奈良時代から繊維産業が盛んな地域です。
上質な綿の産地でもあり「尾州ウール」と呼ばれる生地もあるほどなんです!
今回はそんな「尾州産地」の魅力に迫っていきましょう。
目次
「尾州産地」で製造されたものである証としてつけられているのが、この「尾州マーク」です。
一目で尾州産のものであることがわかるように、「尾」の文字を使い、海外の方にもわかりやすいようにスタイリッシュにデザインされていますね。
ただし、このマークをつけることができるテキスタイルには厳しい条件が3つあります。
まずは、織布と編立・整理加工の工程がどちらも尾州産地で行われたものであること。 次に、尾州産地ならではの技術と優位性を活かして製造されたものであること。 さらに、「ものづくりのストーリーが喚起される製品」であること
これら全てを満たさなければ、尾州マークを付けることは認証されないのです。
特に「ものづくりのストーリーが喚起される製品」という最も厳しい条件がついていますので、ただ“尾州で作ったテキスタイル”というだけではダメ。
長い歴史の中で育まれてきた最高級品質と時代の変遷の中進化してきた「価値」を象徴する「尾州マーク」は、作り手の誇りでもあるということなんですね。
「尾州産地」は木曽川流域の豊かな自然環境に恵まれた環境により、昔から織物生産が盛んに行われてきた土地です。
特に、糸から織物に加工されるまでのすべての工程がこの地域に密集しているのが特徴。そのため、多品種を少量でも短納期で生産することができ、昔から絶えず栄えてきたともいえます。
その歴史は奈良時代にまでさかのぼり、一説には弥生時代にも生地づくりの痕跡があったとも言われています。奈良時代にはすでに麻織物、絹織物、綿織物、毛織物等素材などの生産がおこなわれて、尾州もその役を担っていました。
近代には安価な外国産綿花の輸入やが大企業の大量生産などにより「尾州産地」が危機に陥ったこともありましたが、試行錯誤を繰り返し、織物のみならず洋服用の生地など、麻、絹、綿、ウールと時代に合わせて変遷し常に進化しながら「繊維産業の尾州産地」の「高級毛織物」としてのブランドを維持し続けていられるのは、ファストファッションのような安価で量産するものとしてではなく、匠の技としての技術力によるものなのです。
近年では、尾州マークの作り手同士が横のつながりを深めて「尾州産地」を盛り上げようとしています。
たとえば、「一宮地場産業ファッションデザインセンター(FDC)」では、「尾州ブランド」の確立を目指し、日本だけでなく海外も含め、幅広く展示会や商談会、ファッションショーなどの数多くの取り組みを積極的に行っています。
尾州産地に興味がある作りての方は、こういった取り組みについて調べたり、参加してみたりするのもいいかもしれませんね。
そんな「高級毛織物」としてのブランドで名高い「尾州産地」では何が有名なのでしょうか?
……尾州といえば、やっぱり「ウール」!
尾州産地は国内最大の毛織物の産地で、ここで作られる「尾州ウール」は全国シェアの70%以上を占めているイタリアのビエラ、イギリスのハダースフィールドと並ぶ、毛織物の世界三大ウール地の一つでもあります。一説にはイタリアに並ぶ、高級ウールの世界2大産地とも言われているんですよ。
ただ、「尾州ウール」とひとことで言うことはできません。糸を編むところから始まり、織物・編み物・仕上げ加工まで一貫して行うことができるということは、多種多様なものづくりの技を持っているということです。
メンズもウィメンズも、カジュアルも高級服にも対応できる生地に変化するのが尾州ウールの面白いところですね。
例えば、こちらは尾州ウールを使ったメンズのスーツ。ふくらみと柔らかさがあり、どこか優しげで暖かな印象がありますね。
また尾州ウールで作らればカバンも同じように暖かさがあり、カジュアルでありながら上品な一面もあります。
タータンチェック柄でかわいいフォルムのポーチにもぴったりな尾州ウール。こだわり品ですから、こだわり派の人にオススメです!
色や形を変えれば、どんなアイテムにも多様に変化する。そんな特徴が、他のウール産地とはまた違っていて魅力的なのです★
そんな「尾州産地」では多品種少量短納期生産が特徴とのことですが、どこまでの工程を行なっているのでしょうか?それぞれの工程をチェックしてみましょう!
まずは羊から刈った状態の羊毛に付着している土砂や草などを洗い落とします。そして、向きを揃えた「トップ」という状態に整えます。尾州ではこの「トップ」を輸入し、糸に加工するところから行なっているんですね。
トップをロープ状にして数本ずつ束ね、引き伸ばす工程で細く均一な糸を作りだしていきます。
紡績で作られた糸を1本、もしくは2本組み合わせる工程を「撚糸」と言います。撚りをかけていくことで、糸の加工がしやすくなるだけでなく、糸に表情を持たせることができるんですね。
さらに、「尾州産地」には、意匠撚糸という技術があり、これは2本以上の糸を組み合わせ、加工して作られる糸を生み出すものです。素材や太さが違う糸を組み合わせることができるんです。
生地にする前の、「糸」の状態で色を染めることで「先染め」とも呼ばれます。
「チーズ」と呼ばれる、まるで円柱状のチーズのように巻いた状態で染めるのが「チーズ染め」、糸を束ねた状態で染めるのが「綛染め」です。
織機に経糸と緯糸を通し、布地にしていきます。これはイメージが湧くかもしれませんね。
あまり量産には向かないのですが、緯糸を巻いたボビンを入れたものを左右に飛ばして緯糸を通す「シャトル織機」、そして織機の回転数を柔軟に調整できる「レピア織機」など、その完成イメージによって織り方を変えていきます。
機械の小さな針を動かし、糸をループ状にして連結させていき、最終的な布地の形にしていく「編み」の工程です。
編み方の種類にはいくつかありますが、尾州産地では緯編みの一種である「丸編み」が主流です。これは洋服向けの生地に使用される手法です。
織りや編みの工程で出来てしまった小さな傷や、糸のつなぎ目などを補修していく作業です。最終仕上げの工程となります。
安価な生地と異なり、原料が高価なウールの毛織物は、多少傷があったくらいですぐに捨てるわけにはいかないため、この補修作業もとても重要なものとなります。
それでは、前述した工程で作られた尾州ウールの生地を見てみましょう!
生地のふくらみ、暖かさ、そして優しげな雰囲気を味わえる生地ですね。表面がドット柄のように見える生地や、光沢によって表情を変える生地もあり、生地の仕上がりも幅広いことがわかります。
またこちらの生地では尾州ウールにタンブラー加工をすることで、より“ウールっぽさ”を引き出しているのがポイント。どちらかというと、カジュアルなアウターやワンピース向きの仕上がりです。
中にはこんなに可愛らしい尾州ウール生地も!羽毛立ちが少ないため、アパレルアイテムはもちろん、小物やカバン、インテリアなどにも使えそうですね。
今回ご紹介した「尾州産地」の生地。生地問屋YAMATOMIにてお取り扱いしております!…と言いたいのですが一部取り扱いがある程度です。
また、冒頭でご紹介した『尾』のタグを付けることもできません。(関係者の方、ご覧になられましたら是非YAMATOMIでも取次ぎ卸販売のお手伝いをさせてください〜★)
もし、尾州産地の生地で付加価値を高めたい〜ということであれば、まずは組合などにお問い合わせをしてみるのも一つかもしれませんね♪伝統と誇りある「尾州産地」の生地でぜひあなたのブランドの製品を製作してみてはいかかでしょうか?