ホーム > 【繊維品質LABO】商業クリーニングの基礎について解説
2019.1.17
繊維製品を製造しているうえで、繊維製品に関わる「クリーニング」の基礎の知識は知っておきたいもの。
今回は商業クリーニングの基礎について学んでおきましょう!
目次
商業クリーニングには大きく5種類と、その他があります。
私たちがクリーニング店に商品を持っていくと、クリーニング屋さんでは、衣類の素材や汚れ、洗濯表示、そしてお客様のご希望に応じてどのクリーニング方法にするかを選択しています。
では、具体的にどのような方法があるのでしょうか。
まず初めにドライクリーニングについてです。商業クリーニングのドライクリーニングでは、水ではなくドライクリーニングという手法で、石油系溶剤やパークロロエチレンという有機溶剤で衣類の汚れを取り除いているのをご存知でしょうか?ティッシュペーパーを水の中にいれると形が崩れて溶けてしまうのを想像できるかと思いますが、この石油系溶剤の中にティッシュペーパーをいれても全く形が崩れないんです。
そのため、ドライクリーニングのメリットとしては型崩れや布地が縮むことや風合が劣化してしまうことを抑えることができます。特に毛や絹・レーヨンなどの素材は特に水分の影響を受けやすいため、洗濯機などで選択すると汚れは落ちても服としては致命的なダメージを負ってしまいますので、ドライクリーニングが特におすすめです。
ただし、ドライクリーニングで落とすことのできる汚れは油溶性の汚れ(皮脂汚れや油汚れ)に限ります。水溶性の汚れ(人間の汗や尿など)は落ちにくいというデメリットがあるので要注意です。
次にランドリーですが、家庭用の洗濯機で洗うのと同じように「ランドリー」という手法では水を使います。洗濯機と異なる点は30℃~60℃の温水を使用するということです。大型のドラム型の専用洗濯機を用い、専用の洗剤や助剤などを加えて洗いますので、水に対する耐久性が高い素材が適しています。
そして3つ目はウェットクリーニング。これはとても技術が必要なクリーニング方法です。なぜかと言うと、ウェットクリーニングは洗濯表示でドライクリーニングを推奨している場合や汗汚れなどの水溶性汚れがメインの場合に水を使い汚れを落とす手法なのですが、通常であれば水洗いをすることができないもの(例えばウールやカシミヤ)を、あえて水を使って処理するために、素人が行うと服を痛めてしまったり、傷つけてしまったりするかたなんです。
毛皮製品。これらの洗濯でドライクリーニングを使用してしまうと、毛の風合いが変化してしまったり、脱色されてしまったりします。可能であれば毛皮に特化したクリーニング店に持ち込むのが安心です。ちなみに、毛皮製品をクリーニングする際には、とうもろこしの粉に洗剤と洗浄液を含ませた「パウダークリーニング」という手法を使い、最後には毛皮専用のつや出し機で仕上げていきます。
そして最後に皮革製品。毛皮製品も毛皮製品と同様、繊維製品と同じようなドライクリーニングをすると、風合いが変化してしまったり脱色されてしまったりするため特殊な洗浄方法が必要とされます。そのため皮革製品のクリーニングでは、クリーニング中に失われる油分を補う特殊な洗剤を使用します。
カーペットやカーテン、ぬいぐるみやバッグなども特殊な手法でクリーニングすることが可能です。それぞれの素材や形状、汚れ具合で判断します。
もし家で洗うかクリーニングに出すか迷った場合には汚れの性質と衣類に使用されている繊維を鑑みて判断する必要があります。
汗のような水溶性汚れが付着しているときには、家庭用洗濯機でも水を使用するため充分に汚れがおちます。しかし、ドライクリーニングでは、水溶性汚れは落とすことができません。また、食べ物などの油性汚れが付着している場合には、家庭洗濯でも落とすことができますが、ドライクリーニングの方が有機溶剤をしようするためよりキレイに落とすことができます。
他にも、衣類を構成する繊維の種類に応じて判断する方法もあります。
セルロース繊維からなる「綿」は水になじみやすいため、濡れても問題ありませんので家庭用洗濯機で洗えるのであれば汚れの種類でどちらにするか決めましょう。
しかし、レーヨンは濡れると縮んでしまう性質があります。レーヨンは濡らしてこすことで絹特有の光沢が消えてしまいますので、クリーニングに出すのが良いでしょう。
ポリエステル、アクリル、ナイロンのような合成繊維は水とはなじみにくく、水に濡らしても変形しません。そのため、家庭用洗濯機で洗うことが可能です。ただし、ジャケットのような型崩れしたくないような上着類はドライクリーニングがおすすめです。
家庭用洗濯機で洗濯する場合には、必ず洗濯表示を確認して適切な洗い方を徹底しましょう。「水洗いできません」の表示のものは必ずドライクリーニングに出しましょう。洗濯方法によっては色落ちしてしまいますので、基本的には白物と色柄物は分けて洗濯した方がよいでしょう。家庭での洗濯の場合も手洗いか洗濯機かどうかも判断が必要です。
洗濯物をクリーニング店に出す場合には、汚れの種類やどのような状況でついた汚れなのかをすべて正直にお店の人に説明しましょう。状況によってはきちんと伝えなかったことで間違った処理を施してしまいクリーニングトラブルが発生してしまいます。
また、クリーニング店はどこでも良いわけではありません。LDマークやSマークの付いた店であれば品質の高いサービスを受けることができます。もちろん、洗濯物を預ける場合や引き取る場合には店頭で確実にチェックしましょう。
商業クリーニングにはさまざまな種類があり、なかなか家庭用洗濯機にするかクリーニングに出すべきかは慣れるまでは判断が難しい場合もあります。
繊維製品を提供する場合には、できるだけ判断に迷うことのないように同じ素材で統一するなどの工夫が必要はもしれませんね!