ホーム > 生地にも“耳”がある!?生地耳の役割と裏表・タテヨコの見分け方
2021.3.22
アパレル業界に転職してきたばかりの人や、縫製を学びはじめた人などが初めて聞くと驚く言葉に「生地の“耳”」という言葉があります。
“耳”というと、どうしても人間の耳をイメージしがち。では、生地の“耳”ってどの部分を指し、そしてどんな目的や役割があるのでしょうか?
今回はこの「生地の“耳”」について学んでいきましょう!
目次
生地を購入したとき、端が処理されていない(縫製やロックミシンをかけていない)生地が手元に来たことはありますか?
こうした生地を手にしたとき「不良品では?」「破れそう、ほつれそうで怖い」と感じる人も多いかもしれません。しかし、端が処理されていないからといって、必ずしも不良品とは限らず、それが正常の場合もあるのです!
あなたは「生地の“耳”」という言葉を聞いたことがありますか?人間や動物の耳のことではありません!
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実は、生地の処理されていない端っこの部分のことを「生地の“耳”」と言います。上の画像では、端っこの毛がひらひらしたような部分のこと。毛がひらひらしていない生地の“耳”もあります。
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生地の“耳”は何も処理がされておらず、ものによってはポツポツと穴が空いていること(=耳の穴)もあります。一見すると糸をほどいた跡にも見えますが、実は生地のしわを伸ばすための機械に通した際に、耳の穴が空くのです。
一見すると、生地の“耳”は生地の端っこのため、そのまま糸を引っ張ったらほつれそうですよね。
しかし、生地の端っこは一番強く糸が織り込まれており、簡単にはほつれません。むしろ、生地の真ん中から出ている糸を引っ張った方がほつれやすいのです。
そのため、わざわざ縫製して補強をする必要がありません。
生地の“耳”は単に端っこの処理を怠った結果できたものではなく、きちんと役割を持っています。
まず、生地の“耳”は縫製の必要がないため、縫製による生地の厚みの違い(=段差)が生まれません。股引など体にぴったりしたアイテムを着用するとき、この段差があると何となく着心地が悪くなりませんか?
あえて服と体が擦れるお尻や太ももの部分に生地の耳を使うことで、段差がなく着心地の良いアイテムに仕上げられるのです。
また生地を出荷する際に、広げたり畳んだり、あるいは輸送車や倉庫の中で崩れたりすることがあり、扱うたびに端の方からほつれてしまいますよね。
そうしたほつれを防ぐために、生地の端の部分は強く織り込んで“耳”にすることがあるのです。
ただし、生地の“耳”をそのままアパレルに使うことは実は少ないです。生地の“耳”は縫い代として使用し、不要になれば捨てられる部分でもあります。
その理由は、「歪み」があるため。生地の“耳”に限った話ではありませんが、生地の端っこにはどうしても歪みが出てしまいます。
ほぼ歪みがなさそうな“耳”や可愛いデザインの“耳”もありますが、そのまま使って商品を作り販売すると、購入者から「処理されてないんだけど!?」とクレームが来るかもしれません。
商品として販売する場合には、生地の“耳”は使わない方が吉です。
捨てるのがもったいないような生地の“耳”があったら、端切れと同じように小物や装飾、リメイクなどに活用するのがおすすめです!
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▲生地耳を使ったTシャツのリメイク
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▲生地耳を使ったユニークなポーチ
仕入れた生地を手にしたとき、「どっちが裏でどっちが表?」「タテとヨコどっちに使うの?」と迷うことはありませんか?
生地によってはわかりやすいものもありますが、中にはテキスタイルのプロでも裏表・タテヨコがわかりにくい生地も意外とあるもの。肌に当たる部分・外側に見せる部分もあるので、裏表・タテヨコはしっかりと判断したいところです。
ここではさまざまな方法で生地の裏表・タテヨコを見分ける方法をご紹介します。裏表・タテヨコがわかったら、マスキングテープやピンなどで印を付けておきましょう!
実は生地の“耳”を見れば、生地の裏表を見分けることができます。
まずは生地の“耳”に開いている穴をよーくチェック。穴は基本的に裏側から開けられるので、表側は若干突き出たような形になります。
よって、生地の穴が突き破るように出ている方が表、逆に食い込むように入っている方が裏です。
次はタテヨコの見分け方。“耳”は生地の左右どちらかにできるのが基本なので、耳と並行な方がタテ、垂直な方がヨコです。
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次に、生地を引っ張ることで裏表・タテヨコを見分ける方法を解説します。
まず裏表ですが、ニット生地の場合は左右に引っ張ってみてください。すると上下どちらかの端っこがくるりと丸まります。この丸まった方が表、反り返った方が裏です。
タテヨコの見分け方は簡単。生地はヨコ方向に伸びるのが基本なので、引っ張ってみて伸びやすい方がヨコ、伸びにくい方がタテになります。
洋服を着るときも、ヨコ方向に伸びてタテ方向に伸びにくいため、綺麗なシルエットで着られるんですね。
ただ、生地の素材や種類によっては引っ張っても伸びにくかったり、耐久度が弱く破れやすかったりするため、無理に引っ張らないようにしましょう。
次に生地表面を見て、目視で裏表・タテヨコを見分ける方法です。
まずわかりやすいのは、プリント生地のように柄がハッキリ出ているもの。柄が濃い方が表で、薄い方が裏になります。サテン生地の場合は光沢がある方が表、マットな方が裏です。
斜文織物(ツイルやギャバなど)は無地だと一見タテヨコがわかりにくいですよね。しかし、織り目が右肩上がりになるという特徴があるため、右肩上がりに置けばタテ・ヨコの判断がつきます。
ファーなどの毛並みがある生地の場合、毛並みが寝ている方がタテ、毛並みと垂直方向がヨコです。ファーのアイテムを作るときは持ちやすさや使いやすさに影響が出るため、必ずタテ・ヨコを守って使用しましょう!
モノづくりのために生地を仕入れたら、色や柄、風合いや縫製だけでなく、ぜひ生地の“耳”もチェックしてみましょう。
生地耳で裏表・タテヨコを判断したり、生地耳を縫い代にしたり、あるいはそのままアイテムに取り入れたりなど、さまざまな活用方法がありますよ。
生地の“耳”を捨てるのがもったいないときは、リメイクや小物に使う方法も。生地耳をものづくりに役立てていきましょう!