ホーム > 【繊維素材LABO】アクリル素材とは?アクリル生地の特徴とメリット・デメリットについて解説
2019.3.12
「アクリル」という言葉は誰でも聞いたことがあるかと思います。
アクリル絵の具やアクリル板など、学校や日常的に使う物の中にアクリル製品はたくさんありますよね。
では、服にもアクリル素材が使われていることはご存知でしょうか?
あなたが着ているそのニットも、もしかしたらアクリル生地かもしれません!
今回は服に使われるアクリル素材の特徴と、メリット・デメリットについて解説します。
この生地は
・服に使われている生地の知識を深め、モノづくりに役立てたい ・服の「アクリル」ってどんな素材なのか、何が魅力なのかを知りたい ・アクリル製品を使うときの注意点を覚えておきたい
という人にオススメです!
服の素材について理解して、最適な用途でアクリルのファブリック製品を活用しましょう!
目次
「アクリル」とひとことで呼ばれることが多いですが、実はアクリルには「アクリル樹脂」と「アクリル繊維」があります。
どちらも合成樹脂を原料にしており、布製品はその樹脂を繊維に仕上げているため「アクリル繊維」と呼ばれているのです。
ちなみに学校でもよく使われているアクリル絵の具はアクリル樹脂を原料にしています。
さらに、アクリル繊維はポリエステルやナイロンと並び、「3大合成繊維」の1つです。
そんなアクリル繊維の特徴は「ウールによく似たふっくらとした風合い」「保温性が高い」「水をほぼ吸わない」の3つ。
それぞれ詳しく解説するのと同時に、ウールとの違いも見ていきましょう。
アクリル繊維の風合いはウールとよく似ています。
ウールのようにふっくらとしており、厚みがあって柔らかいのが特徴です。
よく似たニットを作れば、ウールなのかアクリルなのか見分けがつかないなんてことも。
ウールの場合は羊の毛を糸にしたものを使っていますが、アクリルの場合「バルキー糸」と呼ばれる糸を使っています。
バルキー糸は収縮繊維と収縮しない繊維を混ぜており、加熱処理で収縮繊維だけ縮めることで繊維の間にたくさんの空気を含ませています。
空気を含ませ、糸そのものにかさを持たせることでふんわり仕上げているんですね。
ただウールと違うのは、合成繊維なので価格が安く、強度・耐久性が高いという点で、これはアクリルのメリットだと言えるでしょう。
ウール100%だと価格が跳ね上がる場合にはアクリルを代わりに使ったり、何割かをウールと混紡して使ったりすることも。
フェイクファーはほとんどがアクリルでできていると言えるほど、広く使われている素材です。
ウールといえば保温性が高くて温かいのが特徴ですよね。
アクリルも空気を含みウールのようなふんわりした風合いを持っているため、保温性が高いのも特徴の1つです。
科学的に作り出した空気の層の間に体から発する蒸気や暖かい空気を閉じ込め、外に逃がしにくい構造になっています。
そのため秋冬のニット類やアウターにオススメの素材でもあります。
また、ウールなどの天然繊維のように虫食いやカビなどの影響も受けないため、春夏の間はタンスの奥に仕舞っていても大丈夫です。
暖かくて快適なアクリル生地ですが、実はその繊維はほとんど水を吸いません。
吸湿性も吸水性もほぼないので、ある程度の水は弾きますが、逆にいえば内側から出た水分(汗・体温上昇による水蒸気など)があるとベタつきやすくなってしまいます。
ただ、アクリルは撥水加工をしていなければ撥水性ではないので、湿気の多い日や雨の日に着るときは濡れないように気をつけましょう。
一度濡れてしまうと、ベタベタしたままその日を過ごすハメになるかもしれません…。
それでは、アクリル素材の生地にはどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
合成繊維らしい嬉しいポイントはあるものの、使ううえで気を付けないといけない点も忘れてはいけません。
アクリル生地を使ってアイテム製作する際には、ここで解説するメリットとデメリットを比較したうえで作りましょう!
アクリル生地は見た目がウールによく似ているため、ウールニットを着るのと同じような見た目・手触りで着ることができます。
さらに、ニットに使われるウールよりも安い価格で手に入れられるため、アイテム製作の原価を抑えられるのもメリットです。
それでいてウールよりも色が入りやすく綺麗に発色することも、デザイン性の高いアイテムを作るうえでの大切なポイント。
素材よりも見た目にこだわりたい人はアクリル生地を選んでも良いかもしれません。
ウール素材はふんわりとしていて吸湿性もあり、何よりも天然繊維ですから、アクリル素材よりもメリットが多いと感じるかもしれませんね。
しかしあくまで「天然繊維」なので、カビたり虫食いで穴が開いてしまったりと、価格のわりにあまり長持ちしないのが問題点。
それに対してアクリル素材は、ウールに似ていながら合成繊維特有の丈夫さや耐久性を持っているためかなり長持ちします。
自宅で洗濯もしやすく、何度洗ってもデザイン性を損なうことなく繰り返し着ることができますよ。
アクリル素材100%だと次に解説するようなデメリットが目立ってしまい、扱いにくいと感じる人も多いでしょう。
しかし、実はウールをはじめ、コットンやポリエステルなどと混合しやすい素材でもあるのがアクリル素材。
混合して使うことでお互いのデメリットを緩和し、メリットを引き立て合うことができます。
特によく似た繊維のウールと混紡すると、アクリル繊維の最大のデメリット「ベタつき」を押さえつつもウールの柔らかさを引き出すことができます。
アクリル素材の最大のデメリットは水をほとんど吸わないことだと言えるでしょう。
すぐ乾きやすい、ソースなどのシミをある程度弾いてすぐに拭き取りやすいのは良いですが、アクリル素材のニットを着て汗をかくとベタつきやすく、不快感を感じてしまいます。
このベタつきを回避するには、必ずインナーを着て汗を吸水するような工夫が必要です。
合成繊維なのに意外かもしれませんが、アクリル素材は毛玉ができやすい素材でもあります。
ウールと同じように摩擦すれば毛玉ができ、洗濯方法にも気をつけないと細かい毛玉がたくさんつくことになるでしょう。
しかし、これは好みの問題ですが、その毛玉感が「古着」っぽさを引き立ててくれる要因になるかもしれません。
また熱にも弱く、繊維が収縮してしまうので、洗濯後は乾燥機は使わず陰干しするのが良いでしょう。
合成繊維は静電気が起きにくい繊維が多いですが、アクリルは例外で静電気が起きやすい生地です。
ウールに似た風合いであることから冬場のニットアイテムに使われることが多いですが、冬場こそ静電気が多いため、着脱の際にはビリッとしないように気をつけましょう。
100円ショップなどでも静電気を抑えるブラシなどが販売されているので着る前・脱いだ後などにブラッシングをすると静電気を押さえられます。
何となくタグの表記で見かけていたアクリル素材ですが、特徴を知ってメリットとデメリットがわかるとどんなアイテムに使えば良いのかモノづくりのイメージも湧きやすいですよね。
そこで、Instagramからアクリル繊維を使ったファブリックアイテムをピックアップしました。
これらを参考に、ファブリックアイテム作りのアイデアを考えてみましょう!
こちらはアクリル繊維の糸で編んだエコたわしです。
アクリル繊維はとても丈夫で水をあまり吸わないので、キッチン周りのお掃除アイテムにピッタリ!
アクリル毛糸を使って自分で編めば好きな形やデザインにもできますよね。
ふわふわ・もこもこを糸で表現できる「フェルト」をご存知でしょうか?
このフェルトの糸もアクリル繊維からできています。
フェルト人形作りは女性に人気なので、フェルトキットなどがあると良いかもしれません。
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たぶんチンアナゴ #チンアナゴ #ちがう #水筒の中を洗うやつ #アクリル繊維 #フモフモさん #fumofumosan #フモラー #ぬいどり #ぬい撮り
この右側の白い物体はアクリルたわしです。
生地がへたれず汚れを絡め取ってくれるので、細い棒に巻けば水筒やスキマの掃除にも役立てられます。
ホームセンターでアクリルたわしを買わなくても、アクリル毛糸や生地があれば自作もできます。
アクリル生地はウールのように風合いにもできますが、伸縮性をなくし合成繊維っぽい風合いにすることもできます。
さらに染色もしやすい繊維なので、このバッグのように丈夫でおしゃれなバッグも作れますよ。
加工方法によってさまざまな風合いにできるのがアクリル生地の良さです。
こちらはアクリルで作られたセーターですが、見た目も風合いも通常のウールとはあまり変わりません。
きちんと伸縮性もあるので子供服にも合いますが、汗でムレてしまうため他の生地と混合したり、インナーを着せるなどの工夫は必要になります。
これらのアクリルセーターはとても綺麗に発色していますね。使えば使うほど古着感が出てくるのもポイント。
他の生地に比べて色が入りやすいため、このセーターのように鮮やかな色合いのアイテムやデザイン性の高いアイテムを作ることもできます。
ただ色が入りすぎるという特徴もあるので、薄色のアイテムを作りたいときは染料の量を調整する必要があります。
薄めの生地を使って春ニットを作るのもオススメです。
首元や袖に細かい装飾を施すこともできますが、毛玉ができやすい点には注意しましょう。
毛玉ができないようになるべく摩擦を抑えるのが良いでしょう。
このようなオーバーサイズのチュニック作りはいかがでしょうか?
ウールだと生地が伸びすぎて型崩れしてしまう心配があっても、アクリルは丈夫なのでその心配もありません。
何度も着たくなるお気に入りアイテムにはアクリル素材を採用すると長持ちさせられます。
こちらはアクリルニットキャップですが、蛍光色がおしゃれで目を引きますよね。
ハッキリとした色のキャップを作りたいとき、染めやすいアクリル繊維はピッタリの素材だと言えます。
ウールには出せないツヤ感や光沢感も出せるのでオススメです!
生地問屋YAMATOMIでも多数のアクリル素材生地を取り扱っています!ウールによく似た風合いからデザイン性の高いものまで、きっとあなたの探しているアクリル生地も見つかるでしょう。
ここでは、取り扱い製品の中からオススメの生地をピックアップしました!
太番手のBarufyを使用することで柄の凸凹を強調した、セーターライクなケーブル柄ジャガードニット。ふんわり軽めの、洗える秋冬ニット素材です。
高密度なパイル組織にウールを入れる事で生まれたリッチな温かみが特徴。贅沢なタッチと軽い着心地を楽しめる素材です。プルオーバーでもアウターとしても裏地を付けずにご対応頂けます。
こちらはウールに似たアクリル素材をハイゲージで編むことで、カッチリ感のある生地に仕上げています。トップスならビジネスシーンでも使えそうですね。
ふんわりとしたボリューム感と柔らかさが魅力のニット。縦軸状の凹凸感がシャープな印象を与えてくれます。秋冬のワンピースやセットアップ、アウターなどにぜひどうぞ。
ボリュームがありながら軽量感があるのが特徴のニットソー素材です。ソフトな触り心地と軽やかな着心地が味わえるので、秋冬に大活躍間違いなし☆
抗ピル糸を使用してピリングしにくい生地に仕上げました。蛍光色に近いカラー展開もあり、無地でありながらより多くの人の目を引く存在感もポイント。
アクリル生地はウール生地とよく似ていますが、吸水性はウールの方が優れ、逆に耐久性はアクリルの方が優れています。
ただ、ウールが値上がりしている現代では、アクリル生地を使って安価でより丈夫なアイテムを作るのも良いのではないでしょうか?
もちろん、合成繊維だからといって見た目が安っぽくなることはありません。
うまくウールとアクリルを使い分けつつ、必要であれば混紡したものを選んでみてくださいね★