ホーム > 生地の染色の歴史について調べてみた!化学染料・自然着色のメリット・デメリットとも解説!
2019.5.30
生地の染色はもともと草木など自然なものを活用していました。
しかし、今では化学染料がメインです。そんな染色の歴史と、化学染料と自然着色の違いについて調べてみました!
目次
生地の染料の歴史はなんと中国は紀元前3000年頃、ヨーロッパは紀元前2500~800 年頃、インドは紀元前2500年から行われていたことがわかっています。
そんな昔では、そこまで色鮮やかな染色をする技術はなかったのでは?なんて考えてしまいますが、実は紀元前1450年頃のエジプトでは豊かな色彩に染色する技術があったこともわかっています。
今も昔も、「華やかで鮮やかな色合いの服を身につけたい!」という気持ちは同じなのかもしれませんね。
とはいえ、多くの場合基本的には染色は草木など自然にあるものを使用していたと言われています。生地の上に植物や卵白、動物の血液をなどこすりつけて染色していたと言われています。
少し時代が進み、細かく砕いた顔料を生地に直接塗布する手法にたどりつきますが、色落ちが課題であったようです。生地の表面だけを染めると色落ちするということを発見した人々は、繊維そのものを染色するのではなく、生地と顔料を一緒に煮るようになります。この時、一緒に糸も煮ていたようです。
この、昔の人が顔料として使用しているのは、植物や苔類などから抽出したものでした。
などさまざまなものから色を生地に染色していたのですね。
特に江戸時代に入ると、生活のための染色ではなく、オシャレを楽しむファッションとしての染色が活発になります。生地の一部に糊を塗って色が染まらない部分を作る「糊防染」の技法や染める図柄に合わせて型を彫り均一な絵柄を染める「型染」が開発されるなどデザイン製にこだわった表現も登場します。
近年になると、化学染料が登場します。ここからは、化学染料と自然着色のメリット&デメリットを見ていきましょう。
化学染料が世界ではじめて誕生したのは約160年前だと言われています。意外とかなり最近ですね。それまでの自然着色よりも安価で手軽であるとして、少しずつ世界に広まっていきました。
日本では明治初頭から化学染料が輸入されるようになり、すぐに自然着色に取って代わるようになりました。現在日本で売られている商品の99.999%以上が化学染料を使用したものだと言われています。
では、化学染料と自然着色のメリットを見ていきましょう。まずは化学染料です。
大量生産をするうえで、同じ商品なのに色味が異なると困ってしまいます。自然着色ではその時々によって微妙に色味が異なることもありましたが、化学染料を使うと常に同じ色味が再現できるのは大きなメリットです。
自然着色は植物を収穫し、煎じて色を抽出するなどの手間がかかります。
自然着色のコストは化学染料のコストの100倍以上とも言われています。化学染料は安価にできるため、大量生産にも向いているんですね。
自然着色は植物を収穫し、すぐにその染料をしようしなければいけません。しかし、化学染料は2~3年程度は保存ができると言われています。季節やタイミングを問わずに染色できるのはコスト削減にもつながりますし、効率アップにも寄与します。
自然な風合いの色味は自然着色の魅力ではありますが、パキッとした色味をつけたい場合には圧倒的に化学染料が有利です。強い色を出したい場合に便利なのですね。
続いて、自然着色のメリットについてみていきましょう。
化学染料の中には有害なものもあります。染色する過程で有害なだけでなく、染色した衣類を着用していると人体に影響のあるものもありますので注意が必要です。基本的には国ごとに有害なものは使用を禁止するなどの措置が取られていますので、化学染料=全てが有害ということは近年ではありません。あくまでそういうものもあることがある、程度です。
化学染料を行なう過程で排水される水は環境汚染の原因とされることがあります。自然着色でも同じく排水は行われますが、自然着色で排水される水は植物を煮詰めたもののため環境を汚染しません。
パキッとした色合いが実現するのが化学染料の魅力でしたが、逆に言えば自然でやわらかい風合いが叶うのが自然染料の魅力でもあります。グラデーションやぼかしなどは自然着色の方が美しい場合もありますよね。
草木染めをすることで、さまざまなメリットがあります。たとえば、藍染めでは抗菌作用や虫除け作用があると言われています。さらに、茜では滋養強壮や抗菌作用、栗染めは皮膚病に効くなんてこともあります。
ここまで見てきたように、自然着色と化学染料はメリットが全く異なります。コストと鮮やかな色味を重視するのであれば化学染料が良いですが、環境や人体への影響が気になるというデメリットもあります。
自然な風合いや環境への影響を重視する場合には自然着色がおすすめですが、一方で手間やコストがかかります。
それぞれのメリットを理解した上で、目的に合ったものを選ぶのが良いのではないでしょうか。