~ 先代の教えを受け継ぎ、本物の柚子こしょうの味を世に広める〈川津食品 代表・川津峰之〉さま ~
生地問屋YAMATOMIの裁断サービスをご利用いただいているお客様への取材企画も今回で3回目を迎えました。
今回は大分県から柚子こしょうを世に出した先駆けとされる<川津食品>の代表・川津峰之さんにお話を伺いました。
うちは創業60年の会社で現在は柚子こしょうの製造・販売が主ですが、元々は祖父が農産物加工を家内工業としてやっていたのが始まりです。その頃は柚子こしょうは少ししかやっていなかったんですよ。ある時に祖父が「柚子こしょうを何かの原料に混ぜるのはどうだろう」と考え、色んな市場へ出してみたんです。すると、福岡の老舗の辛子明太子製造メーカーの方が 興味を持ってくださり最初の取引先としてお付き合いさせていただいています。そこから徐々に事業が拡大していきました。現在は農産物加工は辞めて本物にこだわる柚子こしょうの生産元であり、プロ集団としてやらせていただいています。
僕は元は公務員だったんです。柚子こしょうが徐々にテレビや新聞などのメディアで取り上げられるようになって、これは流行るんじゃないかと感じたんです。そしてすぐに仕事を辞めて後を継ぐための準備をしました。始めは先代の傍で仕事を見ながら覚えていったんですが、少しずつ会社を大きくしていきたいという思いが湧いてきたんです。まだその頃は会社にするには売上が足りないと言われ、悔しい思いをしましたね。そこから大変でしたがコツコツと続けていくことで売り上げが倍になり、そのタイミングで先代と交代して法人化しました。
10年程前に祖父が亡くなる直前に「教わったことを全て詰め込んだ最高級の柚子こしょうを作るから」と約束して作ったのがこの「柚子殿」なんです。早く祖父に見せたい一心で作ったんですが、そのまま亡くなってしまって見てもらうことは叶いませんでした。なぜこのような梱包になったかといいますと、福岡県の高取焼のぐい呑みを買った時に布に包まれて桐箱に入っている姿を見たことがきっかけです。やっぱり最高級のものを作るのであれば梱包もここまで丁寧でなければいけない、と感じたんですよ。
夏と冬で5000個販売しているんですが、実は文字も私が筆で1つ1つ手書きしているんですよ。祖父から教わった通常の規格にこだわらず素材を贅沢に使う製法を守りながら作り、中身から文字までを全て私が手がけることにこだわりをもった商品です。
生地の裁断と梱包、発送作業を女性2人でやっていて、裁断は生地の端が波波になるように専用のハサミを使って手作業でしていたんです。柚子殿は始めは販売数が500個だったので自分たちでなんとかできていましたが、売れ行きが良くて販売数を5000個に増やすことになり、やることが多すぎてこのままじゃ間に合わなくて困っていたんです。そんな時に御社の裁断サービスがあると聞いて、すぐに頼もうということになりました。今では本当に助かっています。
やっぱり仕上がりが綺麗でさすがプロの技だな、と感じました。素人の僕たちがやるとどうしても歪みが出ますし、バタバタと忙しく作業をしているのでどうしても不安が残ってしまうんです。僕たちの1番の使命は最高級の柚子こしょうをお客様に失礼のないように届けることなので、それ以外のことはプロにお任せするべきだと改めて感じました。「餅は餅屋」と言いますしね。
そうなんですよ。桐箱にマッチして質感も上品で気に入っています。色も柚子こしょう色にしたんですよ。(笑)人は無意識に視覚の中で感じているものがあるんじゃないかと僕は思うんです。主役は柚子こしょうですが、箱を開けて商品を取り出す時に生地に触れるじゃないですか。その瞬間もお客様へワクワクする気持ちと感動を与えていると思うので、とても重要な存在なんです。
柚子こしょうをわさびやからしのような一般家庭にある調味料と同じような存在にしたいですね。この気持ちは私が法人化をした頃からずっと変わっていません。そして、本物の柚子こしょうの味をたくさんの方に伝えていきたいです。九州地方には昔ながらの製法で作られた柚子こしょうがたくさん存在するんですが、全国のスーパーで売られているチューブタイプのものとは味はもちろん香りや風味が全く違うんですよ。ここ最近では柚子こしょう味のコラボ商品が出ていて昔よりも名前の認知度が高くなったとは感じますが、本当の柚子こしょうの味を知らない人がまだまだいると思います。全国の方に知ってもらえるようにもっと頑張りたいですね。それまで私の寿命が足りるか分かりませんが。(笑)